最近は一部のインフルエンサーだけでなく、大手の新聞等でも取り上げられるようになった、FIREムーブメント。
FIREとは、Financial Independence, Retire Early movementの略で、経済的自立と早期退職を両立する、というものです。
簡単に言えば、投資等で「不労所得」を築き、仕事に縛られない自由な人生を歩む、というなんとも素敵な考え方です。
大変希望に満ち溢れた考え方であり、個人的には好きで目指していますが、現実的にはなかなか課題も多い考え方だと思います。
FIREを達成すれば労働力から除外される
配当で不労所得を築くと言っても、一般庶民が行うFIREは、莫大な収入を築いて裕福な暮らしを行うのではなく、支出を減らして倹約的な生活を送るケースが大半です。
というのも、FIREで裕福な生活を送ろうとすると、一般のサラリーマンでは収入が足りません。
そのため、ある程度節約しながら、どちらかと言うと配当等の収入に支出を合わせていく(生活レベルを維持or落とす)ようなイメージとなります。
また、若くして最小限のお金と超節約でFIREを達成し、一生仕事をせず、最小限の支出で暮らしていく、という生き方を目指す人が増えているのも、FIREの課題だと言えます。
FIREを達成した人は労働から脱却するわけですが、少子高齢化が進む日本で、若者が労働から離れていくのは国家にとって大きな損失となります。
これが実経済に影響を及ぼすようになれば、国は何らかの対策を講じてくるでしょう。
「月10万円の配当で、独身生活を貫く」という人も
一言でFIREと言っても、退職後に自分の夢を叶える人もいれば、悠々自適に暮らす人もいます。
そして中には、ただただ仕事を辞めたい一心で、最低限の暮らしを前提として、20代でFIREを達成する人もいます。
住居費込みで月5〜6万円くらいで生活し、且つ独身を貫く覚悟でいれば、数百万円でも達成可能となります。
本当に仕事が辛い、でも辞められない、という人にとって、FIREは希望になります。
実際にTwitter等を見ていると、田舎の空き家を格安で購入し、600万円程度の運用利回りで生活している人もいます。
確かに、お金なんてそれほどなくても生活はできますし、本人がそれで満足していれば羨ましい限りです。
こういった生き方が選択肢にあるのは、本当に良い時代になったと思います。
スポンサーリンク超節約型のFIREは国家として推奨し難い
しかし上記のような生活は、国家としては認めがたいと思います。
「若いうちから子供を産まない覚悟を決め、極限まで消費を削減する必要のあるFIRE」は、少子高齢化対策や景気回復を目指す国の方針と異なります。
また、国は定年退職を後ろ倒しにし、労働力確保に力を入れているにも関わらず、FIREを達成した人は労働力から外れます。
ある程度高年齢であれば、それまで人的資本を投下してきたこと、資産運用による税収のメリットも大きいことから、そこまで問題視はされないかもしれません。
しかし20代、30代の若い世代や40代の働き盛りの世代で達成を目標とする人が多く、国家としては定年が60歳なのか65歳なのか、という次元の話ではありません。
「国は」という表現をすると何か大いなる組織のような感覚になりますが、結局は国民がそれを作り、その損失や恩恵も皆国民が享受することになります。
FIREの考え方には賛同しますし、私もFIREという存在にエネルギーをもらっています。
しかし同時に、この考えがいつか破綻するものだと考え、一生労働者でいる覚悟も持ち合わせています。
このままFIREがブームになれば、税制改正は必至か
FIREムーブメントは、もともとアメリカで発祥したものですが、日本人の考え方に特によく馴染み、大きな広がりを見せています。
しかしこの先その動きが大きくなり、社会全体に悪影響を及ぼすようになれば、アメリカでまず税制改正等が行われるのではないでしょうか。
そして日本でもアメリカをまねて、特定のタイプのFIREを狙い撃ちした税制改正が行われるのではないかと予想します。
最近は日経新聞でもFIREについての話題が取り上げられるほどの人気ですが、FIREがブームになればなるほど、FIREの未来は暗いものとなります。
まずは税優遇を受けられなくなるところから
具体的な税制改正については想像の域を出ませんが、税の優遇措置等が受けられなくなることが真っ先に考えつきます。
株式投資による収入だけであれば、無収入とみなされ、住民税や国民年金保険料等をはじめとした様々な制度で恩恵を受けることができます。
しかしこれは低所得者層を国民全体で支えるための制度であって、FIREを達成する人を助ける制度ではありません。
これらは現在の規模のFIREであれば問題となりませんが、FIREが更にブームになれば、FIREを達成した人を支えるために、労働者層の税金を上げざるを得なくなります。
当然、労働者層はそれを認めませんので、こういった国民の理解を得やすい点からメスが入っていくのではないでしょうか。
ただただ遊んで暮らすだけのFIREはできないような仕組みになりそう
FIREを目指して投資をし、運用益で税金を納めること自体は国が推奨することです。
そのため、人的資本を使ってお金を稼ぎ、積極的に投資に回す、と言うことを長期間続けてくれるのであれば、国としてもメリットがあります。
問題なのは、少ない投資金(=少ない税収)で兎に角消費を抑え、節約・節税を重ねて労働力から除外されることです。
夢を追いかけるために資産を築いて守りを固める、という意味でのサイドFIREであれば国から見ても問題ないでしょう。
つまり、労働意欲を捨てない、何らか労働をすることが前提のFIREが容認され、超節約型のFIREは禁止される、そんな仕組みになりそうな予感がします。
どこまでFIREブームが進むかは分かりませんが、こう言った改正も一つの可能性として予想しておきます。
スポンサーリンク配当頼みのFIREは危険。スキルを伸ばしつつサイドFIREを目指すべき
不動産投資(オーナー)も、youtuberも、正しく言えば労働所得です。
不動産のオーナーであれば借り手を探さなければいけませんし、youtuberは取材をし、動画を作らなければいけません。
雑所得や不動産所得で生計を立てているのであれば、それは完全なFIREではなく、サイドFIREと言えるでしょう。
そして、労働収入と見なされる部分には国家のメスは入りにくい、と言えます。
そのため、FIREを達成できる資金があったとしても、完全に資産運用だけで暮らそうとするのではなく、資産運用をしながら無理のない範囲でその他の収入も獲得すべきです。
具体的には、「総合課税の対象となるような雑所得や不動産所得の収入を確保しておくべき」と考えます。
この状態はサイドFIREとかセミリタイアと言ったりするわけですが、完全なFIREを達成できる資産がないからサイドFIREをするのではありません。
税制改正等の想定外の事態が発生し、FIREの継続が困難になった時に、何らかのスキルを持っていないと生きていけないから、サイドFIREにするのです。
単純労働をするというわけではなく、自らのスキルや経験をマネタイズするノウハウや、いざとなれば収入を増やすことができる手段を持っておくことが重要です。
サイドFIREであればその選択肢の幅は広く、自分の好きなことに挑戦できます。
FIREを達成できる資産があっても、ただただ遊んで暮らそうとするのではなく、何らかお金を生み出す行為を、自分の好きなように挑戦することが大切だと思います。
感想、まとめ。純粋なFIREは社会的な問題が山積み
ここ数年で特にブームになっているFIREムーブメント。
この生き方に憧れる気持ちはよく分かりますし、自分もそうなれたらなあ、と思います。
しかしFIREは課題が多く、多くの人が目指すようになれば、間違いなく締め付けは強化されます。
私も一つの目標としてFIREというものを考えていますが、同時に、一生労働者でいる覚悟も持ち合わせています。
しかし一つ言える事は、この先、FIREを達成しにくい世の中になっていったとしても、築き上げた資産は必ず人生を幸福にしてくれます。
それは自分だけでなく、子供や孫の世代まで影響を与えることでしょう。
FIREには「目標を持つことのエネルギー」を多く貰っていますし、それほどブームにならず、淡々と今のような世の中が続く可能性だってあります。
FIREには課題が山積みですが、一度きりの人生ですから、FIRE自体はとても素敵な考え方だと思います。