持ち家と賃貸どちらが良いか?という議論は、ある意味永遠のテーマです。
昨今の経済情勢を鑑みると、持ち家がお得!とまでは言い切りませんが、逆に「お金的には絶対に賃貸の方がお得!」とも言い切れないと思っています。
もちろん、ケースバイケースですので、賃貸の方がお得になるケースも多々ありますし、賃貸で心を固めている人を否定するつもりはありません。
実際に、賃貸で良かった!という人もいますし、持ち家で良かった!という人もいます。
そのため、本記事は「マイホームは欲しいけど、賃貸にすべきか悩んでいる」という方をターゲットにした内容になります。
初めに書いておきますが、本ブログは住宅ブログになるので、持ち家寄りの内容になっていますのでご承知おきください。
とは言え、持ち家が正解だとも思っていませんので、参考にしていただければと思います。
持ち家の方がお得になる前提条件
全ての人に対して「持ち家の方が賃貸よりもお得」だと言うつもりはありません。
これから繰り返し「ケースバイケースである」と書きますが、人によってどちらが得になるかが異なります。
そのため、まずは「こういう人は持ち家がおすすめだよ!」という前提条件を書いていきます。
この条件に当てはまらない人は、賃貸で過ごすことも一考すべきだと思います。
死ぬまで住み続けるつもりであること
一つ目の条件は、「途中でマイホームを売却するつもりがない」ということです。
言い換えれば「死ぬまでその家に住み続けるつもり」という意思があるかどうかです。
この点は非常に重要です。
「持ち家は資産ではなく負債」はよく言われますが、それは間違いありません。
途中で売ろうとしても大した値段では売れず、ほとんどの可能性で、自分が払ったお金よりも目減りします。
あくまで毎月住宅ローンとして払うお金は、負債の返却であり、途中で売却して利益を得ようと考えないことです。
しかし、人間は「負債」という言葉に弱いですが、別に家賃で支払ったお金も資産ではありません。
最後まで住み続けて完済した上で、上物を取り壊せば、少なくともその時点で「土地の価格-上物の解体費用」の資産は手元に残りますので、二束三文であっても解体して子供に残せば、賃貸と比較してデメリットになるわけではありません。
しかし賃貸で払っているお金がもったいないからマイホームを買って、ライフスタイル等に合わなければ売却する、というのは非常にリスクの大きい危険な考え方になります。
ライフスタイルが変わっても、離婚しても、途中で売却してもローンだけ残る、ということを忘れないでください。
そのため、離婚や転勤などのリスクが大きいと考える方、もしくはそのリスクを許容できないと考える方は、フットワークの軽い賃貸の方が適しています。
マイホームに魅力を感じること
「マイホームが欲しいけど、賃貸の方がお得だから賃貸にする」という意見には反対ですが、逆に「賃貸が良いけど、マイホームの方がお得だからマイホームにする」という意見にも反対です。
たとえば独身で掃除が嫌いであれば、広い部屋があっても掃除が面倒になるだけです。
私自身、持ち家になって、賃貸の頃と比べて自分で掃除をすることも増えましたが、「楽しんでできるか」というのは一つポイントになると思います。
私は賃貸の頃から、「家を掃除するのは面倒だけど、車を綺麗にするのは楽しい」というタイプだったので、私のようなタイプの人間であれば問題ないと思います。
話が脱線してしまいましたが、「そもそもマイホームを欲しいとは思わない」という人は賃貸にすべきです。
転勤、離婚等のリスクを許容できる職種や性格であること
賃貸の最大のメリットは、フットワークの軽さです。
マイホームにすべきか賃貸にすべきかの明暗を分けるのは、お金の問題ではなく、このポイントだと思います。
「マイホームを買ったのに転勤になった」「マイホームを買ったのに離婚した」という状況になっては、賃貸の方が良いと言わざるを得ません。
そのため、「転勤が頻繁にある職種か?」という点や、「絶対に離婚しない自信はあるか?」という点は重要なポイントになります。
最近で言うと、テレワークができる職種か?というのもポイントに加わりそうですね。
将来のことなんて誰にも分かりませんが、自らの職業や結婚事情等を考慮して、リスクが許容できるかは検討材料に含めておくべきです。
会社に高額の家賃補助がなく、年齢が30代前半以下であること
これは後述しますが、賃貸で暮らす人だけに出る、会社からの「家賃補助」は、金額によっては非常に大きな効果を発揮します。
家賃補助の制度は会社によって異なるため、いくら出るのか、退職まで年齢制限なく出るのか、注意が必要です。
大手企業等では退職まで月5万円も6万円も出る会社もありますが、その場合、どう計算しても賃貸の方が得です。
なお、家賃補助を計算に含める際には一生涯勤め上げる覚悟はあるか、という点も考慮しなければいけません。
また、マイホームを購入する人も、マイホームを建てるまでは賃貸に住むわけですから、マイホームを建てるのが遅くなるとただ単純に毎月の返済額が高くなります。
損得だけ考えるなから、損益分岐点は30代前半だと思います。
住宅ローンを組む平均年齢が約40歳なので、数だけ数えると、賃貸で暮らす方がお得になる人が多い、というのは正しいと言えるかもしれません。
ただし、家賃補助や年齢は金銭的な損得だけの話ですので、マイホームが人生の夢であれば、それでも購入すべきだと考えます。
お金をとにかく節約して投資することが賢いと考えている方もいるようですが、使うべきところにちゃんとお金を使って幸福になる事こそ、賢い生き方だと言えるのではないでしょうか。
毎月のローンと賃貸の家賃を比べてみる
持ち家には住宅ローン以外のお金がかかりますが、一先ずそれは置いておいて、返済するローンと家賃だけを比べます。
すると、家賃よりも返済するローンの方が小さくなることがほとんどです。
圧倒的な低金利時代ならではのことと言えるでしょう。
試しにシミュレーションをしてみましょう。
※人によって異なる要素が多すぎるため、ケースバイケースであり、参考程度にしかなりませんのでご承知おきください。
持ち家パターンでは、30歳で新築建売の3LDKを購入したものと仮定します。
賃貸パターンでは、30歳~80歳まで、以下のような物件に住んだと仮定します。
どちらも80歳で死亡するという仮定です。
- 築10年以内の3LDK物件に住んで、築30年程度になるまで20年間住む(子育て中を想定)。30歳〜50歳。
- 子育てが終わった後、築10年以内の2LDK物件に移り住んで、築40年程度になるまで30年間住む。51歳〜80歳。
広さや立地、死亡年齢によっても全然違いますが、あくまで相場観を見るための例です。
「うちの地域じゃこうはいかない!」という可能性もありますが、個別事例については一人一人試算する必要があるので、試しにSUUMOで建売価格等を調べてみると良いでしょう。
その後、「住宅ローン シミュレーション」等で検索すれば、毎月の返済額がおおよそ検討がつくと思います。
山梨県甲府市で賃貸暮らしをした場合
土地柄によっても全然違うので、全国的に見て一番あり得そうな「適度な田舎」である、山梨県甲府市で試算します。
甲府市は私の故郷ですが、日本全国を旅した私が考えるに、これくらいの「適度な田舎」が全国的には最も多い気がします。
なお、冒頭にも書きましたが、基本的に「住宅ローンだけ」と「家賃」を比較したら家賃の方が高くなります。
まず、SUUMOで検索すると、築10年以下の3LDKだと、共益費込みで月額12万円程度です。
田舎だけあって、駐車場付きでした。(都会で車を持とうとすると、更に駐車場代がかかります)
築30年になると3LDKでも8万円程度まで落ちるので、子育て中の20年間はこの平均である月10万円程度で住んだと仮定します。
年間120万円なので、20年間住むと、2,400万円になります。
2LDKで検索すると、築10年以内で7万円、築30年になると5万円程度まで落ちますので、子育て後の暮らしは6万円で試算します。
年間72万円ですので、30年間住んだとすると、2,160万円となります。
これを単純に足すと、(この人のケースでは)賃貸で一生暮らすのに必要な家賃は、2,400万円+2,160万円=4,560万円となります。
山梨県甲府市で戸建てを購入した場合
山梨県甲府市で新築戸建ての建売を購入したとすると、2,300万円程度です。
こちらもGoogleで検索すれば、目安の物件が出てきます。
頭金なし、諸費用込みで2,500万円程度のローン組んだと仮定し、試算します。
私は変動金利派ですが、計算できなくなるので、フラット35による35年間固定金利である「1.32%」を使って試算します。
月々の返済は71,386円、総返済額は29,982,120円となります。
となります。
ざっくり3,000万円とすると、家賃で払う金額は4,560万円だったので、家賃を払い続けるより家を買ってしまった方が1,560万円安くなります。
繰り返しになりますが、あくまで例なので、ケースバイケースであることを覚えておいてください。
住み始めるのが遅ければ賃貸の方が得になりますし、逆に都会の賃貸で駐車場を借りたらもっとお金がかかります。
変動金利にすれば持ち家はもっと安くなりますが、逆に高くなるリスクもあります。
スポンサーリンク持ち家には修繕、固定資産税、火災保険等の費用が必要
もちろん、賃貸と持ち家で比べる際に、単純にローンと家賃で比較することはできません。
持ち家の場合、これに修繕費、固定資産税、火災保険等の費用が加わります。
修繕費も素材や構造によって大きく変わりますが、月1万円(50年で600万円)が一つの目安となります。
ただし、ここ数年の技術革新は目覚ましく、今後はもっと安くなるかもしれません。
例えば、つい最近まで10年に一度メンテナンスが必要だった外壁のシーリング(外壁と外壁の間のゴムのようなもの)も、最新の素材では30年に一度のメンテナンスで足りるようになっています。
しかし将来の技術革新は分からないので、50年間で600万円の修繕費で考えます。
もちろんこれも、建てるハウスメーカー等で素材が異なり、格安メーカーだとメンテナンスが高くなるケースもあるため、個人差があります。
火災保険も保証する金額や内容によって変わりますが、火災保険は10年間で10万円くらいです。
固定資産税も土地や建物の価値が高いかどうかで大きく変わってきますので、目安です。
固定資産税は減税措置を含めて、これくらいであれば年間7~8万円くらいだと思いますので、ざっくり10年で80万円として試算します。
修繕や火災保険、固定資産税、を足して10年間で210万円とし、50年間住むと、1,050万円になります。
本当は固定資産税は徐々に減っていくのですが、それも計算が難しいので除外します。
先ほどの概算で賃貸とマイホームでは1,560万円の差があったので、修繕費や固定資産税を含めても、ここまでは持ち家の方が500万円ほどお得になると考えます。
しかし、後述しますが、賃貸では会社が支給する「家賃補助」のパワーが大きく、勤める企業によってはそこで逆転します。
「賃貸は修繕費や固定資産税、火災保険が不要だから安い」というのは誤りがある
住宅ローンだけの金額を考えて「家賃より安い」と言っている人に対して、「持ち家は修繕費や火災保険、固定資産税がかかるから実際はもっと高い」と指摘するのは正しいです。
しかし、「持ち家は修繕費や固定資産税、火災保険がかかるけど、賃貸はかからないから割安になる」と説明する方がいますが、それは誤りがあります。
確かに修繕費や固定資産税は賃貸ではかかりませんが、それによって割安になるわけではありません。
よくよく考えてみてください。
アパートであっても経年劣化による修繕は必要ですし、火災保険に入っていますし、固定資産税も発生します。
あなたがアパートのオーナー(投資家)だったとして、その費用はどうしますか?
当然、家賃に乗せて徴収しますよね。
アパートにだってそれを維持するための出費や税金が発生していて、オーナーがアルバイトして払っているわけではありません。
それは結局「家賃」という形で、借主が負担しているのです。
そのため、賃貸だと修繕費や火災保険、固定資産税はかからないけど、だからと言ってその分丸々安くなっているわけではありません。
だから築年数がそれなりに経ったアパートでも一定程度家賃はかかります。
もっと言えば、銀行から借り入れて不動産のオーナーになっているケースも多いですが、その金利だって家賃に乗っています。
賃貸業はあくまで収益を生むことが目的なので、家賃は必要経費を引いて黒字になる水準で設定されているということを忘れてはいけません。
住宅ローン控除は大きいが、サラリーマンの家賃補助はもっと大きい
持ち家には、大きなメリットとなる「住宅ローン控除」があります。
これを最大限活用できるかどうかで、持ち家の方は資金繰りが変わってきます。
例えば、住宅ローン控除があるうちは繰り上げ返済せず、貯まったお金は投資に回します。
そして住宅ローン控除が使い切れない場合、その投資で出た収益を確定申告することで、税金が還付されます。
住宅ローン控除の活用については、下記に私の考えをまとめていますので、参考にしてください。
参考記事 : 住宅ローンは35年、頭金なしがお得?フル活用して資産形成する方法!
しかし賃貸で忘れてはいけないのは、会社からの「家賃補助」です。
家賃補助は勤める会社によりますが、これが大きい会社はここで一気に賃貸>持ち家に逆転します。
例えば、大企業になれば月5万円補助してくれる会社もあり、30歳から65歳まで、35年間貰い続けたとすると、2,100万円もらえることになります。
住宅ローン控除は13年の期間でも、良くて500万円程度の還付です。
先ほど賃貸と持ち家との差で500万円ほどありましたが、それを足しても1,000万円にしかならないため、家賃補助が5万円あれば圧倒的に賃貸の方がお得です。
先ほどから「ケースバイケースだ」と書いているのは、賃貸の場合、この家賃補助が「いくら出るか」「何歳まで出るか」等によって大きく左右されるからです。
例えば、私の会社では家賃補助は2万円程度しか出ないのに、家を建てた人にだけ出る「住宅手当」があるので、これを含めるとまた逆転します。
この要素が大きいためどうしてもケースバイケースになりますし、自分の勤める会社の福利厚生と、今の会社に一生勤める覚悟をセットで考慮しなければいけません。
スポンサーリンク年齢による個人差も大きい
しかし上記の計算は、30歳で家を買った場合を想定しています。
家を建てるのが遅くなればなるほど、新築住宅は金銭的に不利になっていきます。
たとえば40歳で家を買ったとすると、30歳から40歳までの間は賃貸になり、さらに住宅ローンの期間も短くなるため、家を建てた後の毎月の返済額も高くなります。
もちろん、修繕費は下がりますが、100万円、200万円の世界です。
家を建てるのが40歳過ぎになってしまった場合、それまでの資産運用でかなりの資金があれば別ですが、ある程度の節目まで(子供が巣立つまで、等)賃貸で過ごして、中古住宅を建てるのが得策です。
しかしあくまで「金銭的には得策」ということであって、一度しかない人生ですので、「新築のマイホームで家族と過ごす」のが夢であれば、間違いなく買った方が良いです。
金銭的な損得だけで判断してしまうと、健康寿命が過ぎ、人生を振り返るようになった時に、きっと後悔すると思います。
※マイホームを買わないと後悔する、のではなく、お金のために夢や欲を我慢すると後悔する、という意味ですので悪しからず。
資産価値の下落は売るつもりのない人にとってはメリット
お金だけ比べるとケースバイケースですが、持ち家の様々なリスクについても考えておかなければなりません。
まず言われるのが、資産価値の下落です。
建物は40年もすれば資産価値はゼロどころか、建っているだけでマイナスです。
土地は立地によりけりですが、賃貸派からは「少子高齢化が進んで土地の資産価値もさらに下落する」という意見も耳にします。
もちろん将来のことは誰にも分からないですが、住宅の取り壊し費用(200万円程度)より残った土地の価格が高ければ、後の世代には迷惑をかけません。
それ以上であれば、建物の価値も土地の価値も、下がれば下がるほど良いです。
なぜなら、始めに前提条件を書きましたが、持ち家が向いている人は「一生売るつもりがない人」だからです。
売るつもりがない人にとっては、建物の価値や土地の価値が下落すれば、固定資産評価額が下がり、単純に固定資産税が減額されるメリットしかありません。
土地の価格が上物の取り壊し費用を下回り、子供に負債を残すのは望まれませんが、資産として残そうと考えなければ極限までゼロに近い方が、自分が生きている間の負担は減っていきます。
金利上昇リスクはあるが、経済状況によってはメリットになることも
もう一つ言われるのが、金利上昇リスクです。
住宅ローンの金利が上がったら返せなくなる、という話はよく聞きますよね。
もちろん、変動金利を選ぶ方は、繰り上げ返済分を確保しておくとか、固定金利に乗り換えるボーダー金利を決めておく等、その対策をしなければなりません。
しかし金利の上昇は、必ずしも持ち家にとって逆風とは限りません。
現在、日銀は毎年2%の物価上昇を目標としてマイナス金利を実施しているので、金利が上昇する時は想定通りにインフレが加速していることが想定されます。
こう言ったインフレ局面には不動産等の現物資産は強いです。
「資産」という言葉に引っかかる方もいるかもしれないので念のため訂正すると、家の資産価値が上昇するのではなく、住宅ローンの価値が漸減するのです。
毎年2%物価が上昇する場合、住宅ローンの残高はその分、相対的に目減りしていくことになります。
ところが、物価が上昇している場合、貨幣価値が下がっているので、家賃は上昇します。
極端な例え話をすると、物価が10倍になってチーズバーガーが1,000円、飲み会一回が3万円の時代に、家賃がそのまま数万円、というはずはありません。
しかし物価が10倍になっても、住宅ローンは増えませんので、固定金利なら返済額はそのままです。
変動金利の場合は金利分は上昇しますが、固定金利に乗り換えるボーダーを予め決めておけばある程度で回避できます。
何が言いたいかと言うと、金利上昇は持ち家のデメリットばかり注目されますが、その時は物価が上昇していることが見込まれ、結果、住宅ローンは漸減しますが、家賃相場は高くなります。
金利だけが上がってデフレが発生する、という状況は持ち家にとって最悪ですが、今の経済状況ではまず起こりません。
インフレを抑制させるために金利を上げた場合、デフレと金利上昇が同時に起こりますが、その時は既にハイパーインフレが起こった後です。
そのため、今の日本のままデフレが起きているのであれば、金利は低いままです。
物価の上昇は住宅ローンにとってメリットで、徐々に物価が上昇しているのに金利がマイナスな現在は、住宅ローンにとって最高の環境と言えます。
様々なリスクは価値観の問題
本記事は「住宅が欲しいと思える人向け」という前提を書きましたが、言い換えればマイホームのリスクを許容できる人向けの記事です。
よく言われるリスクが、「隣人が変質者だったら困る」という話です。
マイホームは一生に一度の買い物なので、隣人が変質者だった場合でも逃げられません。
賃貸であれば引っ越すことができるので、確かにこれは大きなリスクです。
とはいえ、賃貸の場合、一度良好な隣人関係を築けたとしても、自分が引っ越さなくても隣人が引っ越してしまい、変質者の隣室になってしまうリスクがあります。
持ち家の場合は、隣人の交代はほぼ無い代わりにハイパーリスク、賃貸は複数回発生するがまぁまぁなリスク、といったところです。
また、賃貸なら引っ越せると言っても、子供や親と一緒に暮らしていたりすると、そう簡単に引っ越しできないのは想像に難くないと思います。
隣人が変質者となって恐怖を味わい、心に深い傷を負ってしまうのは、最終的に逃げられる賃貸であってもリスクです。
とは言え、この点について最終手段として引っ越しが残されている賃貸は、持ち家よりも圧倒的に優位なのは間違いありません。
マイホームは災害に弱い、というのもリスクです。
火災保険に入っていても補填には限界がありますので、持ち家の場合は可能な限り災害リスクの低い地域を選ぶ必要があります。
これも持ち家にしかないリスクです。
しかし逆に賃貸だと、下や隣の部屋の人が火災を起こす可能性もありますので、リスクの話をすれば一長一短です。
どれだけ自分が気を付けていても、下の部屋の人がだらしなく、部屋でたばこを吸って火災になる、ということも考えらます。
それはもはや金銭の問題ではなく、命の問題になります。
どちらに住んでもリスクは伴うので、自分の性格を考えて「何をどこまで許容できるか」を考える必要があり、これは個人差が大きいです。
世の中には生命保険から給与サポート保険まで様々な保険(リスク)がありますが、人によって何に加入するかは異なりますよね。
世の中には無限にも近い数多くのリスクがあり、どのリスクに保険をかけておくかが「リスク許容度」と言うわけです。
賃貸は高齢になると入居を拒まれることも
賃貸だけのリスクでよく話題になるのが、高齢者の入居拒否問題です。
住んでいる人が入居中に死亡した場合、クリーニング費用だけでなく、その物件の資産価値にも影響します。
更に死亡時の状態によっては近隣に腐敗臭が漂ったり、噂話が広まることもあり、オーナー側としては可能な限り高齢者は避けたいと考えています。
高齢者が入居しにくいというリスクは「何だかんだ何とかなる」と曖昧に片付ける人もいますが、これは大きなリスクと認識すべきです。
もちろん、現状は拒否されるところもあれば住めるところもあるので、露頭に迷うことはありません。
しかし、20年後や30年後に「なんだかんだ何とかなる」かどうかは分かりません。
たとえば、インフルエンサー等の影響で、持ち家ではなく「賃貸派」が増えたと仮定したら、30年後に賃貸暮らしの高齢者が急増することだって考えられます。
そうなった時に、高齢者が入れる優良物件は競争が激化し、現役世代が住まなくなったオンボロアパートしか住めなくなるかもしれません。
もちろん上記は妄想ですが、私が言いたいのは「将来も、高齢者は賃貸探しに困らない」と断言することはできず、それはリスクとして認識し、対策を講じなければいけない、ということです。
賃貸には途中で中古住宅を買うという手段がある
家賃補助の大きい企業で賃貸に住み、資産運用し、最終的には中古のマンションや戸建てを現金一括で購入する、というのは金銭的には最強の手段だと思います。
20年、30年くらいで空き家問題が解決するとは思えませんので、お金だけを考えればかなりの良策と言えます。
このような「持ち家にも逃げられる」という戦略は賃貸だけの特権で、新築で購入した場合には取り得ない戦略です。
改めて、賃貸の最大のメリットは「フットワークの軽さ」と言えるのではないかと思います。
ただし、中古住宅も買った時点で負債であり、もう一度売れるとは考えない方が良いでしょう。
つまり中古住宅を購入した時点で新築持ち家と同じく、隣人が変質者のリスクも、災害で倒壊するリスクも降ってかかります。
これってよくよく考えると、「これまで賃貸で住んでいたサラリーマンが、人生の途中で中古住宅を買った」ということに過ぎません。
新築で家を建てる人も、それまでは賃貸や社宅に住んでいると思いますが、その状態とほぼ変わらないのです。
ただ、「そのまま賃貸に住み続けるつもりだが、いざとなったら中古住宅を買う」という選択肢に移ることができるのは、賃貸の大きなメリットと言えるでしょう。
だからこそ、「死ぬまでこの家に住み続ける」ことが前提となり、途中で住めなくなるリスクが高い人は危険です。
途中で移り住んだり、引っ越したりすることを想定するのであれば、賃貸にすべきです。
ただし、高齢になったらローンは組めないので、最低でもキャッシュ一括で中古住宅を買えるくらいの蓄えは必要です。
それが、「高齢者が賃貸を借りられないかもしれない」というリスクの対策になります。
賃貸であっても持ち家であっても、自分自身で計画的に資産形成することがリスクの低減に繋がるのです。
結局金融リテラシーがものを言う
色々と書きましたが、結局のところ、個人の置かれている状況によって、賃貸とマイホーム、どちらがお得か?という結論は変わってきます。
たとえば、私が勤める会社はマイホームを建てると「住宅手当」がもらえますが、賃貸の「家賃補助」は2万円程度しか出ません。
また、私は29歳で家を建て、ペアローンで住宅ローン控除をフル活用しているため、賃貸よりも計算上お得になります。
税制や複利計算だけでなく、会社の制度を把握してフル活用することも必要です。
賃貸なのかマイホームなのか、という話は、各種制度をフル活用する前提ですので、これからも毎年変化する税制を勉強し続ける、高い金融リテラシーが求められます。
自分が置かれている状況に当てはめて、どちらが得かを計算できなければ、インフルエンサーの言いなりになってしまいます。
自分で計算できないものは闇雲に信じない、という考えを持っていないと、特にお金関係は詐欺に合うリスクも高まります。
マイホームを希望する人が賃貸で過ごせば裕福になれるとは思いませんし、逆に賃貸を希望する人がマイホームを建てれば裕福になれるとも思いません。
「マイホームには憧れるけど、お金的に損だから我慢して賃貸にする」という意見には反対ですし、「マイホームを建てる人は金融リテラシーが低い」「賃貸の人はみじめな人生を送っている」といった罵り合いも真っ向から否定します。
自分自身の欲求と金銭事情を考慮し、全てを理解した上で「必要なところにちゃんとお金を使って幸福になる」ということも金融リテラシーの高さだと考えます。
感想、まとめ。マイホームに憧れるなら我慢する必要はない
私が試算した上では、賃貸と持ち家の金銭的な損得は、家賃補助の大きさと年齢で変わると思います。
家賃補助はデータがないので分かりませんが、住宅ローンを組む平均年齢が40歳程度という事を考えると、世の中の平均的には賃貸の方が得をする人が多そうです。
しかし自分自身のことは自分自身に当てはめて計算しない限り分かりません。
金銭的に賃貸がお得かマイホームがお得かは人によって違うので、どちらかが絶対に得、ということはないと考えています。
また、様々な税控除や制度をフル活用する前提で考えていますので、高い金融リテラシーを持つ必要があります。
自分が目標とするマイホームを建てた時と、自分が納得できる賃貸を借りた時を比較し、試算できるくらいの力は必要です。
ケースバイケースである本件を比較するには、人生設計をよく考え、会社の制度に関する知識はもちろん、住宅ローン控除、地震保険料控除等の知識も必要です。
私と妻はお互いFP2級の資格を有していますが、自分自身のシミュレーションをするにあたって、FP2級くらいの知識を持っていると良いかもしれません。
持ち家や賃貸の話だけに限らず、お金に関することは、SNSやyoutubeの内容を鵜呑みにせずに個人差があることを前提に自分自身のケースで試算してみることを強くお勧めします。
「お金は損だけどマイホームは幸福感が高い」という解釈には二つの誤りがあると思います。
「マイホームは賃貸と比べて、お金的に損」とも限りませんし、「マイホームは賃貸よりも幸せ」とも限りません。
マイホームと単体に関しては個人差が大きすぎるため、ブログやYoutubeの情報は「私は得しました」「私は幸せでした」ということに過ぎません。
自分の人生において、どちらが幸福かを考え、自分のケースで当てはめてシミュレーションをしてみることが大切ではないでしょうか。